アトラスのDSゲーム、『7TH DRAGON』の二次創作。最近クリアしたので記念に何か描こうとか。
1頁スキャンしたもの↓。一冊にしたいな。
上の漫画とは特に関係ないです。どっかの冒険者の話。
--------
火は既にその舌を休め、黒ずんだ薪の中でまどろんでいた。肉を炙り、草を煮るに足りた熱はとうに失せ、星辰と凡そ同等の痕跡を残すのみである。今、山に猟師は歩かず、大きな動物は眠っている。東風が真黒い叢を、ざぁっと言って通り過ぎるはずが、地を這うものや夜の鳥どもに遮られているのが、確かに感じられる。
薪が焼け落ちて二寸ほど転んだ。女は目覚めていた。布に包まったまま懐中から時計を出し、ラジウムの文字盤を読んだ。二時十二分。横になってから一時間と経たない。腹を満たし、体は地熱でじわりと癒され、しかし何が不足なのか女の眠りは浅かった。闇に帳されてなお精気に満ちた山中は、女にとって居心地の良いねぐらではなかった。そこここから生まれ、土を破り、地下を流れ、屠り屠られ、睦み合い、撒き散らされる生命の躍動に絶えずぶるぶる震える空気が、吐呑されるごと躊躇うのである。種を破る新芽の如く、女は空気を求めて起き上がる。
元来、女は粗食に甘んじて生きてきた。故郷の風土は湿って竹ばかり生え、柔らかい広葉樹の温かみなど馴染み薄かった。決して痩せた土地ではないにせよ、資材や人材は床しいほどに乏しかった。しかしながら、その土地に美しい水があれば愛すに充分である。
この夜の中にはもう一人、男が目覚めていた。暗中の何か、確かに居るものたちを驚かさぬよう、男の声は女に届くと土に染み消える。
「明日には着くから、今は休め。都会は疲れるぞ。」
「お前は、いつまで一人で働くつもりだ?」
女は身じろぎもしない。機微のない言葉は凍みじみこごったようで、男はそっと自身の腹を撫でた。
「満足するまでだ。だらだら生きンのはツマランからな。」
数秒の沈黙の後、女は再度、横たわった。夜がうるさい。何がそんなに悲しいのやら。
カザンに着くと、男は女から依頼達成の報酬を受け取り、護衛の任を解かれた。そうして、それぞれ別れた。
この記事にトラックバックする